牛さんを愛する農業生産法人のざきの野﨑喜久雄氏が登場!カンブリア宮殿「1次産業にこだわる!世界が注目する和牛王の不屈経営術」視聴レビュー
2015年2月12日(木)放送のカンブリア宮殿「1次産業にこだわる!世界が注目する和牛王の不屈経営術」に登場したのが、鹿児島の薩摩川内市にある牧場、農業生産法人のざきの野﨑喜久雄(のざき・きくお)氏です。飼育する牛を「牛さん」と呼ぶ人の好い感じの方でした。
番組冒頭、東京・恵比寿にある高級ホテル「ウェスティンホテル東京」の最上階にある「鉄板焼 恵比寿」で、“のざき牛”に客が舌鼓を打つ模様が流れていました。鉄板焼き恵比寿では、のざき牛を扱うようになってから売上も伸びたそうです。また、イトーヨーカドーの精肉コーナーでも松阪牛の4割安い価格でのざき牛が販売されており、お客さんから高い人気を得ています。
ちなみにこの「のざき牛」、通販で買えるところはほとんどありませんが、楽天市場で唯一「黒毛和牛専門店 精肉卸問屋 犇屋(ひしめきや)」で販売しているのを確認しました。ただし、のざき牛そのものではなく、千屋牛という牛肉とのセット販売になっているようです。
黒毛和牛の肥育に特化し、最高級の黒毛和牛を安定的に大量生産する独自のシステムを作り出したのが、野﨑氏その人です。また牛肉のブランド名と言えば「松坂牛」「神戸牛」「飛騨牛」などほとんどが地名で名付けられていますが、牛肉のブランド名に「のざき牛」という個人の名前を付けたのは国内で野﨑氏が最初だそうです。
野崎氏によると、地名ではなく個人名を付けることで、「私が安心・安全に責任を持ちます」「問題があれば私に言ってください」という生産者としての姿勢を明確にしているそうです。
農業生産法人のざきでは、一般的な肥育会社の100倍近い4800頭もの和牛を育てています。驚くべきなのは、4800頭もののざき牛をわずか15人の社員で育てている点です。フンの始末や掃除などを外注(アウトソーシング)して、社員は徹底的に牛の様子を見てストレスを取り除く仕事に従事しているそうです。
番組では農業生産法人のざきが直面した2つの大きな危機を紹介していました。1つ目が日本の牛肉生産農家を激震させた「輸入牛肉の自由化」です。輸入牛肉の関税自由化が実現すれば、和牛は壊滅的な打撃を受けると危惧する関係者も多い中、野崎氏は輸入牛肉に対抗できる和牛育成のキッカケとなる「平茂勝」と出会います。
平茂勝は通常の2倍近くの大きさに成長する種牛で、今では全国に31万頭以上の子孫を持つ伝説のスーパー種牛でもあります。この種牛を見出した野﨑氏は、平茂勝を独占することなく、日本全国の和牛生産者が買える仕組みにして国内の和牛関係者を輸入自由化という荒波から救う立役者となります。
2006年7月、川内川流域で洪水が発生し、のざきの牛舎も水没してしまいます。被害総額は約4億5千万円、倒産の危機に陥ります。しかし地元の宮崎銀行が救いの手を差し伸べ、最大のピンチをしのぎます。
そして奇跡が起こります。洪水から3か月後、洪水でおぼれかけていた牛が、国内最大のコンテストで名誉賞(最優秀賞)を受賞します。その翌年にも最高賞を受賞し、2年連続制覇という今なお破られていない記録です。
肥育農家の平均年齢は60台がほとんどですが、農業生産法人のざきの社員の平均年齢はなんと25歳だそうです。のざきでは入社直後から価値にして3億円もの牛舎をまるごと任せ、一人で400頭の牛の世話をさせる独自の人材活用術をとっています。
野﨑氏は社員を一国一城の主として、餌のタイミングや世話の方法まで、すべて任せてしまっているそうです。社員全員が仲間であり、ライバルでもあるため、切磋琢磨できる環境が若者を惹きつけているのだと思います。社員の採用基準もずばり、「牛が好きな人」です。
和牛の人気が高まっている香港では、のざき牛が和牛販売量No1だそうです。のざき牛は今では世界10か国に進出していますが、香港を皮切りにさらなる世界展開を進めていくとのこと。2次産業者から「和牛はのざきしなかい!」と思われるよう特化していくと、野崎氏は語られていました。
1次産業から6次産業まで一貫して関わる事業者も増えている中で、1次産業だけに特化するという農業生産法人のざきの野崎氏のこだわりには執念を感じます。こうした和牛の職人とも呼べるスペシャリストの精神が、世界で選ばれる和牛を生み出すことにもつながるのかもしれません。