「北朝鮮と韓国」「アメリカとメキシコ」だけではない“壁”問題が学べた、未来世紀ジパング「池上彰の世界激変3時間スペシャル 世界を分断する”見えない壁” そのとき日本は?」
遅ればせながら2017年4月10日(月)放送の未来世紀ジパング「池上彰の世界激変3時間スペシャル 世界を分断する”見えない壁” そのとき日本は?」を視聴しました。ジャーナリスト池上彰さんが“見えない壁”をテーマに、北朝鮮や中国、アメリカ、メキシコ、カナダ、イスラエル、フランス、リトアニアなど世界各国の緊迫する状況を取り上げた回です。
番組冒頭、日本から最も近い壁として紹介されたのが韓国と北朝鮮の間にある軍事境界線「38度線」です。北朝鮮による相次ぐミサイル発射や核実験で緊迫する韓国と北朝鮮の関係ですが、今は両国ともに中国との関係も悪化しています。
朴槿恵(パク・クネ)元大統領が収賄や機密文書流出容疑で逮捕されて以降、韓国では“親北朝鮮”(左派)と“親米”(右派)の間の緊張も高まっているとのこと。2017年4月現在、残念ながら日米韓vs中国・ロシア・北朝鮮という6ヵ国の構図になりつつあるようです。
ただ2017年5月の韓国大統領選では北朝鮮に融和的な政権が誕生する可能性が高いと見られており、6か国の構図が日米vs韓中露&北朝鮮という対立関係になる恐れもあります。九州にある航空自衛隊のスクランブル発進も、中国軍機の対馬飛来が増えている事から増加傾向にあるそうです。
米国のトランプ政権は武力行使も選択肢に入れ、原子力空母カール・ビンソンを派遣するなど北朝鮮への圧力を強めています。日本でも内閣官房の「国民保護ポータルサイト」等に弾道ミサイル攻撃を受けた際の避難方法が掲載されるまでになりました。
アメリカではメキシコとの壁が話題になっていますが、今回の未来世紀ジパングではカナダとの壁について紹介されていました。トランプ政権になって米国の難民受け入れが厳しくなる反面、お隣のカナダではジャスティン・トルドー首相が中東などからの難民を積極的に受け入れています。
フェミニストを公言するジャスティン・トルドー首相の人気はカナダ国内で非常に高いようですが、ドイツのように難民の数が膨れ上がり、犯罪やテロといった負の側面が見えて来た時にリーダーとしての真価が問われるように思います。
世界の壁と言えばイスラエルとパレスチナ自治区が有名です。イスラエルがヨルダン川西岸地区との境界のすぐ外側(西岸地区の内側)に建設中の分離壁、この壁の建築を請け負っているイスラエルの建設会社がマガール・セキュリティシステムズ社です。
マガール・セキュリティシステムズ社はIT技術を駆使し、スマート・ウォールと呼ばれるテクノロジー技術をふんだんに盛り込んだ分離壁の建築を得意としています。アメリカからメキシコとの国境壁を依頼されるなど、世界中に壁を建築する大手企業として社名を覚えておいた方が良さそうです。
番組ではトランプ大統領の大きな動きとして、イスラエルが実効支配するエルサレムにアメリカ大使館を移転させようとしているニュースも取り上げていました。ユダヤ教、イスラム教、そしてキリスト教と3つの宗教の聖地であるエルサレムに米国大使館が移転されると、中東での内紛が激化する懸念があります。
ネット上でも世界を分断する壁の要因として、「嘘ニュース」が紹介されました。ウソニュースの発信地は米国国内ではなく、マケドニア共和国など東ヨーロッパの国々に住む貧しい若者が発信しています。その理由は政治的な思想ではなく、多額のネット広告収入を得るためだと言います。
2017年4月23日のフランス大統領選で、台風の目といわれるのがマリーヌ・ルペン氏率いる反EU反移民を掲げる極右政党「国民戦線(FN)」。国民戦線のナンバー2でもあるブルーノ・ゴルニッシュ氏は、日本を参考に簡単にはフランス国籍を外国人が取れないようにしたいと取材に応えていました。
ロシアのクリミア併合によって危機感を強めるリトアニアも、ロシアとの国境に今年中に壁を建設することを予定しているとのこと。学校でも自動小銃の使い方を教える程です。第二次世界大戦下、杉原千畝が多くのリトアニア人を救った命のビザの逸話も番組最後に紹介されていました。
日本とアメリカも貿易の壁が昔からありますが、やはり最終的に壁を取り払ったり、乗り越えるのは人間の愛や勇気からもたらされる行動なのだと、今回の未来世紀ジパングスペシャル回を見て感じました。池上さんもコメントされていませんが、今こそ「情けは人のためならず」の精神が大切ですね。