“脱・自前主義”を掲げる関西ペイント(4613)の石野博社長が登場!カンブリア宮殿「世界を塗り替える!知られざる巨大塗料メーカー」視聴レビュー
2015年1月29日(木)放送のカンブリア宮殿「世界を塗り替える!知られざる巨大塗料メーカー」に登場されたのが、1918年に創業された日本No1の塗料会社「関西ペイント株式会社」(東証1部上場、証券コード:4613)の石野博(いしの・ひろし)社長です。
番組冒頭、ホンダの人気軽自動車で17色ものカラーバリエーションがある「N BOX」が紹介されていました。関西ペイントは自動車塗料はもちろん、高給列車のななつ星や東京タワー、鹿児島にある巨大石油タンク、豪華巨大客船等など、あらゆるものの塗料を開発しています。
サビ止め効果がある防食塗料や、腐食防止効果のある塗料、そして船底に使われる生物付着防止塗料など、様々な効果を持つ塗料が関西ペイントによって生み出されています。
塗料メーカーの売り上げランキングは関西ペイントが3,204億円で第1位、次いで売上2,605億円の日本ペイントが第2位、948億円のエスケー化研が第3位と続きます。
日本1の塗料メーカーを率いるのが、今回のカンブリア宮殿に登場された石野博社長です。2007年にはメインの自動車塗料事業が売上の半分近くを占めていましたが、自動車依存の高さ危機感を抱いた石野社長は“付加価値塗料”の開発に注力を始めます。
関西ペイントの最近のヒット商品が「アレスシックイ」と呼ばれる、「漆喰」を塗料化したもの瀬品です。脱臭効果や湿度調整、さらにはインフルエンザ菌の繁殖を抑制できるといった効果があるとのこと。
本来の漆喰は原料も高く専門の職人に依頼しなければ塗れませんが、「アレスシックイ」は誰でも手軽に塗れて価格も漆喰と比べると3分の1程度だそうです。一般家庭や病院、保育園などでもアレスシックイの利用者が増えた結果、2007年には売上比率17%だった建築用塗料が、2013年には26%まで成長し関西ペイントの柱の1つにまで成長しています。
番組ではスタジオで遮熱効果のある塗料が紹介されていました。目では認識できない無色透明の塗料ながら、最高10度くらいまでの違いを生み出せる塗料とのこと。
石野社長は元三菱商事の商社マンとして世界中を飛び回っていましたが、塗料メーカー特有の下請け体質脱却のため2003年に関西ペイントに入社し、2013年に社長に就任した経歴を持たれています。
石野社長の関西ペイントが積極的に売って出ているのが世界市場です。ここ10年で海外拠点が一気に増え、今では世界36カ所以上の拠点を持つグローバル企業となっています。
石野社長は近年成長が著しいサウジアラビアのメッカにある世界最大の礼拝堂の増改築工事にて、関西ペイントの塗料が使われるというビッグプロジェクト受注にも成功しています。
なぜ日本メーカーがこのようなビッグプロジェクトを受注できたのか?その理由は、国内シェア7割を超えるサウジ最大のゼネコン「ビンラディン グループ」と合弁会社を設立したことにあります。
石野社長の戦略は“脱・自前主義”。主導権いこだわらず信頼できる現地企業と組むことで、市場シェア獲得を目指されています。関西ペイントでは2011年に南アフリカ最大の塗料メーカーを買収し、PLASCON(プラスコン)という社名で事業を拡大しています。
プラスコンの社内に日本人は一人もおらず、社長もグローバル企業出身の若干38歳の外国人社長です。日本人で全部やるのではなく、その国や地域を知り尽くした優秀なスタッフを信じて任せるほうが、市場を拡大させる近道だと石野社長は考えられています。この“脱・自前主義”によって、石野社長が入社した時は2割程度だった海外売上比率が、今では56%にまで達してします。
各国の関西ペイントグループのトップたちが一同に揃う「グローバル会議」では、各社のコスト管理、人材育成、商品の研究成果などを発表・共有しています。
石野の発案から南アフリカで開発されたのが、家の内壁に塗るだけで家に入ってきた蚊が血を吸わなくなるという「蚊よけ塗料」です。南アフリカのマラリア対策として開発された蚊よけ塗料をグローバル会議にかけたところ、「デング熱」が社会問題となっていたマレーシアのグループ会社が販売を開始し、現地で大ヒット商品となったています。日本でも2015年春から蚊よけ塗料の販売がスタートするそうです。
村上龍氏も編集後記で書かれていましたが、日本メーカーで今苦戦している企業の多くは自前主義にこだわり過ぎていると思います。関西ペイントの信頼をベースにした“脱・自前主義”は世界市場で売り上げを伸ばすためのキーポイントだと思います。